How to say も大事

How to sayよりも、What to say。
コピーライター業界ではよく耳にする言葉です
(ボクも駆け出しの頃は、耳にタコができるくらい聞きました)。
つまり、「どう言うか」ではなく「何を言うか」が大事だということ。
確かにその通りだと思います。
商品やサービスのどこに目をつけるかで、
コピーライティングの7〜8割が決まると言っても過言ではないでしょう。
「目の付けどころが、シャープでしょ」という、シャープの昔のタグラインは有名ですが、
目のつけどころをどれだけ尖らせるかで、コピーの質は左右されるのです。


株式会社シャープ


コピーライティングの講義や書籍では、
What to say(何を言うか)に多くのボリュームが割かれています
(もう聞き飽きたよ、というくらい)。

ただ、How to say(どう言うか)をないがしろにしてもいいのかというと、
そんなことはありません。
そしてまた、What to say(何を言うか)は努力で身につくけど、
How to say(どう言うか)は持って生まれたセンス次第、
ということもまったくないのです。

How to say(どう言うか)は努力次第で上達します。
How to say(どう言うか)のセンスは磨くことができます。
そしてコピーライターに必要なセンスとはズバリ、「感じること」です。
自分が本当に感じたことだけを紙に落とす。
しつこいようですが、考えたことではなく、感じたことです。
レトリックやダブルミーニングなど、テクニックに頼ってはいけません。
うまく書こう、うまく言おうとしても、得てしていいコピーは生まれないもの。
なので、「感じるまでは書かない」というのもひとつの手法と言えるでしょう。
「コピーは書いて書いて書きまくれ」とよく教えられますが、
やみくもに書いても意味がありません。
だからあえて書かない。感じるまでは。
素直に感じたことを、たくさんの人に共感してもらうのが、コピーライターの仕事なのです。

もちろん「合う、合わない」はあります。
感じ方は人それぞれですから、万人ウケするコピーは難しいでしょう。
そして、時代性もあります。
昔の人にはわかるけど、今の人にはわからない。
逆に「そのとき」だからこそ刺さるものもあると思います。

たとえば「おいしい生活」というコピー。
これは1982年に糸井重里氏がつくった西武百貨店のコピーです。
それまで「おいしい」という表現は食べ物に対してのみに使われる言葉でした。
しかし、「おいしい生活」の登場以降は、笑いや出来事にも「おいしい」が用いられるようになった。
その時代を生きる人の感性に響き、コピーが言葉の文化を変えた好例と言えます。

How to say(どう言うか)のセンスを磨くにあたって、もうひとつの視点を紹介しましょう。
それは、「ちょっと油断するとイヤな奴になる」ということ。
広告というのは、基本的に商品やサービスを「自慢するもの」です。
そのことは消費者にもバレています。
だから自分で自分を自慢しないように、言い方を工夫しないといけないのです。

さらに、駅貼りポスターや雑誌広告が見られるのはほんの一瞬です。
ということは、パッと見てわかるコピーでないといけません。
それこそ3秒で伝わらないといけない。
3秒という時間では、「理解」はできませんが、「知覚」はできます。
知覚とは、能動的に吟味する行動ではなく、動物が受動的に感じるものです。
だからコピーライターは、大脳ではなく小脳を狙う。説明するのではなく、感じさせるのです。
暑い、冷たい、きれい、かわいい、うるさい、怖い、お得な、暴力的な……なんでも構いません。
とにかく3秒で感じさせます。
広告は見られないもの、信用されないもの、というのが大前提。
だからコピーライターの存在意義があり、How to say(どう言うか)のセンスが問われるのです。